□工場畜産における子牛 ('05/5/14)
ピーターシンガーの「動物の解放」という本を読んでいます。
動物の権利について書かれている本であり、関心のある人には広く読まれている本だと思います。
私は動物実験の本を偶然手にしたことから動物の問題に関心を持ち始め、菜食を始めましたが、
当時この「動物の解放」を読んだことで、卵・乳製品も購入を避けるようになりました。
(もう5年程前に読んだきりでしたので、もう一度改めて読んでみようと思ったのです)
この本は主に動物実験、工場畜産について書かれており、その内容についてはまた動物サイト等で
紹介していきたいと思いますが、今回はその中でも子牛の肉について紹介したいと思います。
自然な状態で飼育される仔牛と違い、工場畜産においては、私達の想像し得ないほどの過酷な
状況で飼育される仔牛も存在します。
以下、抜粋文より
現在行われているあらゆる形態の集約畜産の中で、高級仔牛肉(ヴィール)産業は道徳的にもっとも嫌悪を催されるものであって、これに比肩しうるのはガチョウに漏斗を使って強制給餌を行いフォアグラの原料になる変形した肝臓を作るようなたぐいの野蛮行為だけであろう。
肉用仔牛飼育の本質は、監禁された貧血状態の仔牛に高タンパクの餌−これは世界の貧困層の栄養不良を軽減するために使うべきものである−を与えて、高級レストランで食通たちに出される、やわらかい淡色の肉を作るというものである。
秘訣は仔牛をきわめて不自然な条件に置くことにある。仔牛を戸外で育てれば、彼らは非常に遊び好きであるから、野原をふざけまわるようになるであろう。そしてまもなく筋肉が発達し始め、肉は硬くなるであろう。同時に草をはむであろうから、肉は新生仔牛のような淡い色ではなくなるであろう。だから専門的なヴィール生産者は、仔牛を競売場から連れてくると、ただちに監禁するのである。
納屋を転用したものや、はじめからその目的で作られた畜舎の中に、何列もの木のしきりが作られる。それぞれの仕切は幅が約55cmで、長さが135cmである。仔牛は、仕切の中で向きを変えることができないように、首のまわりにかけた鎖でつながれる。仕切の中にはわらやその他の敷料は入れられていない。仔牛がそれを食べたら肉の淡い色が失われてしまうのである。
ここで仔牛は13〜15週間飼われるのである。彼らは屠場へつれていかれるときまで、仕切から出されることはない。仔牛たちは、脱脂粉乳にビタミン、ミネラル、成長促進剤を加えたものをベースにした液状の餌だけを与えられる。
狭い仕切りと、細長い木の板をしきつめた床は、仔牛たちにとって著しい不快さの原因となっている。ぐるっとまわることができないので、欲求不満にもなる。仔牛が横になるときは、体を丸くして横にならなければならず、スペースが広いときにするように脚を片方に投げ出すことはできずに、ほとんど脚を下敷きにしてすわるような姿勢をとらされるのである。あまり狭いため、ぐるっと回ることができないような仕切の中では、また気持ちよく毛繕いすることもできない。しかし仔牛たちは、頭をよじって、舌で毛繕いしたいという生まれつきの欲求を持っているのである。敷きわらの引いていない木製の床は、硬くて居心地の悪いものである。仔牛が立ち上がったり横になったりするときは、膝が床できつくこすられるのである。
明らかに仔牛たちは痛々しいほどにいなくなった母親を恋しがるのである。彼らはまた、しゃぶりつくものもほしがる。しゃぶりつきたいという衝動は、赤ん坊の牛の場合、人間の赤ん坊と同じくらい強いのである。これらの仔牛にはしゃぶりつく乳首はないし、またその代用品も与えられない。彼らは、監禁の第一日目から −それはおそらく生後わずか3〜4日目であろう− プラスチックのバケツから液状の餌を飲むのである。
ふつうは適当な対象がないというのに、仔牛が狂ったように仕切の一部分を吸おうとする光景はよく見られる。もし読者がヴィール仔牛に指をさしだしたとしたら、人間の赤ちゃんが親指をしゃぶるのと同じように、仔牛はすぐにその指をしゃぶろうとするであろう。
これでもまだ足りないといわんばかりに、仔牛はさらに意図的に貧血状態に置かれるのである。プロヴィミ社の「ストール・ストリート・ジャーナル」には次のように書かれている。
ヴィールの色は、上等なヴィールの市場で「最高の値」がつくために必要な、主要な要素の一つである。
「明るい色」のヴィールは、割り増し価格がついて、高級クラブやホテル、レストランで引っ張りだこである。
「明るい色」あるいはピンクのヴィールは、部分的には仔牛の筋肉の中の鉄の含量と関係がある。
正常な仔牛は、鉄分を草やその他の形態の粗飼料から取り入れるであろう。しかしヴィール用仔牛にはこれが許されていないので、貧血になるのである。淡いピンクの肉は、実際に貧血の肉なのである。この様な色の肉に対する欲求は、俗物(スノッブ)好みのものといえよう。薄い色は味とは関係ないし、肉の栄養価を高めるわけでもない。むしろ逆に肉の栄養価を下げている。
仔牛たちは、貧血にかかった動物である。意図的に鉄不足の状態に置かれているので、彼らは鉄をむしょうにほしがるようになり、仕切の中の鉄製の部分を手当たりしだいになめようとする。だから木製の仕切が使われるのである。プロヴィミ社は取引先に対して、次のように説明している。
金属製の仕切の代わりに硬木を用いる主な理由は、金属がヴィールの明るい色に影響を与える恐れがあるからである・・・仔牛の口の届く範囲から一切の鉄分を取り除きなさい。
仔牛は豚と同様に、ふつうなら自分の尿や便には近づこうとしないものだが、尿には幾分かの鉄分が含まれている。鉄分に対する欲求があまりに強いので、自分の排泄物に対する自然な嫌悪感はふっとんでしまって、貧血の仔牛は、自分の尿でぬれている木の板をなめようとするのである。生産者は仔牛がこういう事をするのを嫌がる。なぜなら、仔牛はそれによって若干の鉄分をおぎなうからであり、また尿と同じ所に落ちる糞便の中に含まれている病原体で感染する恐れがあるからである。
できるだけ短期間にできるだけ重い仔牛を作ることを目的としているヴィール生産者の基準に照らすならば、仔牛が市場に出荷されるときまで何とか生きていてくれさえすれば、動物の長期的な健康状態などはどうでもいいのである。
退屈した仔牛たちが落ち着きのない状態になるのを少しでも抑えようとして、多くのヴィール生産者は、餌を与えるときを除いて、動物を一日中暗い所に置くようにするのである。ヴィール用畜舎は普通は窓がないので、暗くするためには明かりを消すだけでよい。このようにして、すでに本能が必要としている愛情や活動や刺激の大部分を失った仔牛たちは、一日のうち22時間以上も、仲間の仔牛から得られる視覚的な刺激やふれあいを奪われるのである。暗い畜舎でかかった病気はなかなか治らないことが分かっている。
ヴィール生産者にとっては、10頭の仔牛のうち1頭は15週間に渡る監禁飼育が終わるまでに死んでしまうのを経験するのはありふれたことである。こんな短い期間で10%もの死亡率を出すというのは、成牛を肥育するために仔牛を育てている業者の場合には破滅的な事態であろう。しかし、ヴィール生産者は、高級レストランが高値で買ってくれるので、この損失にも耐えることができる。
以上抜粋文でした。
本能が必要としている愛情・活動・刺激の大部分を失う・・そして暗闇の中、貧血状態で退屈な状態。
想像するだけでぞっとします。ただ、この様な文章を読むと、生産者が残酷に見えるかもしれませんが、
実際、「需要」 があるわけですよね。しかし、こんなにも悲惨で過酷な短い一生を送る子牛が存在する
などと、知る人は殆どいないのではないでしょうか。
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